突然ですが、「経営者保証に関するガイドライン」ってご存知ですか?
このガイドラインは、全国銀行協会と日本商工会議所が中心となってまとめたものです。
ものすごくシンプルにいうと、中小企業が金融機関から借り入れをする際に、借り手企業の経営者が個人保証をしなくてもすむようにするための基準を示しています。
2014年2月から適用されていますので、なかにはこのガイドラインに沿って個人保証なしで融資を受けた会社さんもあるかも知れませんね。
金融機関から融資を受けるためには、必ず個人保証を求められるものだと思っている経営者の方が多いのではないでしょうか。実際、これまでは(そして多くの方にとっては今でも)、大半に経営者保証が付いていました。
ですが、近年経営環境の変化が激しくなるなか、経営者保証が足かせとなって思い切った経営施策が打てないなど、中小企業の活力を阻害する側面も指摘されていました。
そこで、経営者保証に依存しない融資制度の在り方を検討して生まれたのがこのガイドラインです。
ガイドラインは、経営者にとっては個人保証をしなくても融資を受けることができる基準を示したものであり、金融機関にとっては経営者保証に頼らない新たな融資手法の導入を求めるものと言えます。
ガイドラインに法的な拘束力はありませんが、「中小企業、経営者、金融機関共通の自主的なルール」と位置付けられており、それら関係者が自発的に尊重し、遵守することが期待されています。
さて、それではガイドラインの具体的な内容をご紹介します。
とてもメルマガだけで紹介できるものではありませんので、お時間のある方はガイドラインやその事例集が公表されていますので、一度読んでみてくださいね。
http://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/abstract/adr/sme/guideline.pdf
http://www.fsa.go.jp/news/27/ginkou/20150731-7.html
まずこのガイドラインは、新たに融資を受ける時に限らず、すでに融資を受けている事業を含め、大きく分けて次の三つの場面を想定しています。
①新規の融資を受ける場合
②既存の契約を見直す場合
これには、事業承継の際の後継者の個人保証の問題も含まれます。
③法的整理、私的整理など、事業を整理しようとする場合
今日のアントレレポートでは、①と②の場合について説明しますね。
新規の融資を受ける場合や既存の契約を見直したい場合に、借り手である中小企業に求められる条件は、次の3点です。
1.法人と経営者の関係の明確な区分・分離
法人と経営者の資産をごちゃ混ぜで管理していたり、法人と経営者の間での貸し借りを含め、資金の移動が頻繁に行われていたりする中小企業は多いですね。
ですが、これらが社会通念上の範囲を超えると、法人と経営者が一体であると看做されてしまいます。
法人と経営者を区分・分離するための体制を整備することが求められます。
2.財務基盤の強化
法人が単独で有する資産及び収益力で返済が可能であることが求められています。これは当然のことですね。
また、個人保証に代わる物的担保の提供を求められる場合もあります。
3.経営の透明性
自社の財務状況を正確に把握し、金融機関に対して、資産負債の状況や事業計画、業績見通し及びその進捗状況などの情報を正確かつ丁寧に説明することで、経営の透明性を確保してください。
定期的に金融機関とコミュニケーションをとることは大事ですね。
一方、ガイドラインには、債権者としての金融機関に求められる対応の内容も定められています。
上記の条件をクリアしている中小企業に対しては、金融機関としても、経営者保証に代わる具体的な融資手法によって資金を提供しなくてはいけません。
金融機関にとっても、これまでのように「個人保証がないと融資できません。」というような一方的な対応は許されないことになります。
ここに来て金融庁がガイドラインの活用実績件数を公表したり、ガイドラインの活用参考事例集を作成したりするなど、政策的にガイドラインの活用を後押しする動きもあります。
経営者保証なしの融資を受けたいときや経営者保証を外してもらうことによって新たな事業展開を図りたいという具体的なご要望があるときは、是非対象となる金融機関の相談窓口にご相談することをお奨めします。
それでは、今日はこの辺で。