中小企業の海外進出の動きが活発化するなか、政府や自治体もこの動きを後押しするような施策を実施していることは、これまでもこのアントレレポートで
取り上げてきました。

今年の8月から11月初めにかけて、東京都が主催して実施された「中小企業と留学生の交流支援事業」もその一つです。

これは、中小企業を対象として、日本に留学している外国人留学生をもっと採用してもらって、外国人社員を戦力として活用することを促進することを目的とした事業です。

外国人留学生を「採用して戦力化」する具体的なパターンとして、海外進出のための、いわば「水先案内人」役があげられます。

中小企業が「海外進出を目指したい、でも難しそう」と考える時、その一番の壁は、言葉と現地の文化だと言われています。

ビジネスをする上で相手の文化・風習を理解してコミュニケーションすることは不可欠です。そのため、単に現地語を話せる日本人を雇えばよいというわけにもいきません。ここに外国人留学生を活用することができるというわけです。

東京都のセミナーでは、この方法で海外進出を成功させている会社の社長さんの
お話をお聞きすることもできて、来場者の方々はかなり具体的に留学生を採用するイメージが描けたと思います。

セミナーでは、私も留学生を採用する場合のビザの手続きについてお話をさせていただく時間をいただいたのですが、会場いっぱいにお集まりいただいた方々をみて、外国人採用に対する中小企業の意識が急速に変化していることを実感しました。

では、現在日本でどれぐらいの外国人が働いているかというと、昨年10月の事業主からハローワークへの届出数値によれば、日本で働く外国人労働者数は約79万人です。

そのうち、いわゆる専門的・技術的分野などで「就労目的での在留が認められている人」が約14.7万人、技術移転を通じた開発途上国への国際協力を目的とする
「技能実習」の資格で働く人が約14.5万人、「資格外活動(留学生のアルバイト)」も約14.7万人が働いています。

一方留学生の側からみた日本企業への就職はというと、大学などに留学している学生のうち約60%が日本で就職することを希望しているにもかかわらず、日本の採用スケジュールや慣行がわかりにくい、自分に合う企業を見つけにくいなどの課題もあって、実際に日本で就職できるのはそのうちの約半分、大学などを卒業する留学生全体の4分の1程度に留まっているのが実情です。
(平成25年度実績、(独)日本学生支援機構の調査による)

外国人留学生を採用して戦力化することが本格化するためには、課題も沢山残されている反面、本気で取り組めばまだまだ優秀な人材を採用できる可能性が高い
ということだと思います。

ここで、企業や留学生を対象にした外国人採用(就職)支援のための事業を少し見てみましょう。

●厚生労働省および関連機関・省庁が発表した「外国人材活用推進プログラム」
  http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000086181.html

 ・大学の留学・・就職担当向けセミナー開催
 ・中堅・中小企業のグローバル展開における
  外国人留学生等の活用セミナー
 ・就職マッチングイベント
 ・関係省庁・機関が一体となった就職支援体制の構築
 ・留学生就職支援ネットワークシステムの活用
 ・JETプログラムキャリアフェアの開催

●東京都労働局・東京外国人雇用サービスセンター
  http://tokyo-foreigner.jsite.mhlw.go.jp/

対象:卒業後、日本で就職を希望している外国人留学生と、 「技術・人文知識・
         国際業務」「技能」などの専門的・技術的分野の在留資格を持つ外国人
         労働者

サービスラインナップ:
<外国人留学生向け>
 ・外国人留学生向け求人情報の提供・紹介、個別相談
 ・就職活動支援各種セミナー
 ・在留資格に関するアドバイス 
 ・外国人留学生合同就職面接会 など

<専門的・技術的分野の在留資格を持つ方向け>
 ・外国人労働者向け求人情報等の提供、職業相談・紹介
 ・専門アドバイザーとの相談
 ・就職活動支援各種セミナー など

●日本貿易振興機構(ジェトロ)
  https://www.jetro.go.jp/jetro/activities/support.html

中堅・中小企業等の日本からの輸出や海外進出を、ジェトロ内外ネットワークを駆使して支援しています。
 ・貿易投資相談や海外展開のノウハウ提供の講座開催
 ・海外からバイヤーを招へいしての商談会実施
 ・海外展示会への出展支援
 ・海外へのビジネスミッションを派遣 
 ・ジャパン・ブランドの発信 など

ジェトロでは、11月と12月に関連するイベントも企画されているようです。
詳細が公表されましたら、このアントレレポートでもお知らせしますね。

このほかにも外国人労働者や留学生の雇用促進を目的として、「外国人留学生インターンシップ研修支援事業」や「外国人雇用促進」のための助成金や補助金などが、各自治体などから公募されることもありますので、ぜひウォッチしていきたいですね。

アスパルは認定支援機関として、中小企業・小規模事業者の皆様の海外展開を支援しています。海外進出にあたっての疑問や不安などを感じたら、いつでも気軽にご相談ください。

それでは、今日はこの辺で。