皆さますでにご存知の通り、今月4日に「日本郵政」と傘下の「ゆうちょ銀行」、「かんぽ生命保険」が東京証券取引所に株式上場しました。

比較的高い配当が得期待できるということもあって購入した方も多かったようですね。

今回の上場で3社の株式のそれぞれ約11%が投資家に売却されました。

売り出し価格(日本郵政1400円、ゆうちょ銀1450円、かんぽ生命2200円)に対する株式の配当割合は2%~3%とのことで、株式投資のプロというよりは、これまで株式投資をしていなかったような方も含め、個人投資家の注目が集まりました。

売り出し価格の3社の時価総額は14兆1450億円で、民営化企業としては1987年のNTT(初値で約25兆円)以来の 大型上場となったようです。

今回の郵政株の上場ですが、株式相場にはあまり関心のない方でも、企業経営者としては「ゆうちょ銀行」の動向には 注目しておく必要があると思います。

ゆうちょ銀行が、今後個人や中小企業向けの融資業務をどのように進めていくのか? については、まだほとんど情報がありませんが、やはり注視していかなければならないでしょう。 
そしてメリットを受けることができるよう有効活用したいものです。 

ゆうちょ銀行としては、上場したのですから、株主の期待に応えなければなりません。

そのためには企業価値を高める必要がありますが、他の銀行にはない厳しい規制を受けており、課題が多いのも事実です。
現在、ゆうちょ銀行が新規業務に進出する場合は、金融庁や総務省の「認可」が必要となります。
ただし、持ち株会社である日本郵政がゆうちょ銀行の株式を50%以上売却した時点で 「認可」制から「届出」制に規制緩和される予定です。

なお、現在のゆうちょ銀行の預金限度額は1千万円です。住宅ローンなど貸し出し業務も基本的に取り扱っていません。
ですが今回の上場で、さらに民営化が進むことになれば、将来的には、個人・法人向けの融資をはじめ、地域の中小金融機関などが手掛けている様々な銀行業務にも参入しやすくなることでしょう。

今まさに「金融再編時代」に突入している感がありますが、このゆうちょ銀行の上場が 金融再編に繋がるという見方もあります。

ゆうちょ銀行が融資業務などに進出すれば、地域の金融機関にとっては、
融資業務や住宅ローンで競争が激しくなり、地域金融機関は、再編による規模拡大や効率経営を求められることになるかもしれません。

現在のところ、ゆうちょ銀行は「預金限度額の引き上げ」以外にも、「住宅ローンなど個人向け融資」、「法人向け融資」、「損害保険の募集業務」などへの進出を目指しているようです。

それに対して、銀行業界からの反発は凄まじいものがあります。

報道によりますと、全国地方銀行協会の寺澤辰麿会長(横浜銀行頭取)は、「同じ土俵で相撲を取れと言うなら公平な競争条件の確保が必要」
と述べ、政府関与が残る状態での新規業務は不公平だと反発しているようです。

ゆうちょ銀行の預金額は約178兆円。
地銀約100行の預金を合計しても約319兆円です。

ゆうちょ銀行の2倍に満たない預金額の地銀が反発するのも頷けます。

でも“中小企業”にとっては、ゆうちょ銀行が融資業務等へ進出すれば、
メリットがあると思いたいものです。

実際のところは、歴史とノウハウを蓄積している銀行や信金と正面で競合できるようになるまでには相当の時間を要すると思います。

そのためゆうちょ銀行としては、他の銀行との連携等によって新業務への進出を図っていくのではないか という見方もありますね。

いずれにせよ中小企業にとっては、今後のゆうちょ銀行業務の動向と金融再編の行方、そして、取引先金融機関の動向などを総合的に加味しながら、自社の財務の方向性を探っていくことが重要だと思われます。

そしてメリットがあれば、それを享受できるようにする! 
という積極的な姿勢を持ちたいですね。