これまで何度か中小企業で外国人留学生を活用する動きが出てきているとお伝えしました。
そこで今回は、外国人留学生などの優秀な外国人材を積極的に採用し、アジア圏への海外展開を進めている、株式会社コスモテックの高見澤社長に、外国人材の活用についてお聞きしてきました。
まずは、コスモテックさんの会社についてご紹介します。
【株式会社コスモテック概要】
●所在地: 東京都立川市錦町5-5-35
●設 立: 1989年11月1日
●代表者: 高見澤 友伸
●売 上: 32億円 (2014年度単体)
45億円 (2014年度連結)
●従業員数: 42名(単体) 350名(連結)
●事業内容:
「機能性フィルム」
(主に電子機器部品などに使われる工業用粘着テープ)
の開発・製造・販売から品質保証までの総合ソリューションの提供
●海外拠点:
中国-蘇州市 (海外生産拠点)、香港
韓国天安市、台湾台北市
それでは、外国人材の活用の成功事例をご覧ください!
-現在、外国人の社員の方は何名おられるのですか?
高見澤社長: 日本本社の技術部門に1名、販売・営業部門に3名、
さらに韓国に1名(日本採用)、蘇州に1名 (2001年に日本採用し、現在は現地代表者)の6名が活躍中です。
この6名中5名は外国人留学生の新規採用による入社です。
-外国人材の採用には、いつ頃から積極的に取り組まれたのでしょうか?
高見澤社長: 2008年のリーマンショックが大きな契機といえるでしょう。
当社は電子機器のモジュールに必要な特殊フィルムや粘着シートのメーカーです。
リーマンショック以前は、パソコン、携帯電話、液晶テレビ向などの急速な進展で、日本の家電や電子機器のメーカーは事業拡大を続け、中国などへの生産拠点移転も盛んに行われていました。
おかげさまで当社も順調に業績を伸ばし、2006年には中国の蘇州市に生産工場も設立しました。
ところが、リーマンショックによって状況が一変。
当社の取引先である多くの電子機器モジュール・メーカーが事業撤退や縮小を余儀なくされ、当社も大きな打撃を受けました。
とにかく自力で新たな活路を見出すため、モジュール設計に強いアジア圏の中国、台湾、韓国での新たなお客様開拓や販路拡大に取り組みました。
私自身が現地に出向いてビジネス・ニーズの開拓に奔走し、海外への攻めのビジネス展開にチャレンジしたのです。
そしてその中で強烈に感じたことが、やはり“現地の文化と言語”を理解し、異文化との架け橋となってくれる人材の必要性でした。
2012年からは、台湾、香港、韓国に現地法人を次々と設立するとともに、特に販売・営業の分野へは、継続的に留学生をはじめとする外国人材の採用を強化しました。
今ではこれまで採用・育成した外国人社員が、言語能力や専門性を駆使して、マネジャーや現地法人との橋渡し役として、ビジネスをリードするまでに成長し活躍してくれています。
-外国人留学生獲得へのアプローチ方法は?
高見澤社長: 日本にいる外国人留学生や外国人材との出会いには常にアンテナをはっています。
ハローワーク主催の合同企業説明会や、外国人材の採用を支援するJETROや自治体が開催する「就職交流イベント」やセミナーなどにも積極的に参加しています。
昔はハローワーク経由で紹介してもらうのが唯一の道でしたが、今は企業と外国人材をマッチングしてくれるアジア・リンクさんのような会社も増えましたので、人材紹介会社のチャネルをいくつもてるかも重要だと思います。
また、うまくタイミングが合わず採用が叶わなかった留学生たちとも、引き続き継続的にコンタクトし、
出会いを大切にしています。
-新卒の日本人と外国人留学生に違いは感じますか?
高見澤社長: 外国人留学生のほうが、大企業へのこだわりがなく、企業名だけで判断することが少ないように思います。中小企業であっても、いかに社長が熱意を持って説明会などに出てくるか、あるいは社長と気が合うかなどを最も重要視するようです。
入社後は、留学生のほうが仕事への気合がはいっているのか、専門的なことなどを学ぶ速度は早いように感じます。
もちろん外国人採用にあたっては、当社の公用語である日本語でコミュニケーションできることは最低限必須です。
どうしても日本語でうまく話ができない場合は、日本語学校に通わせるようなことまでしています。
また言葉以前の問題ですが、当社の企業文化を理解してもらうのは、日本人・外国人を問わず大切なことですね。
-外国人社員の日本での定着は難しいと聞きますが?
高見澤社長: 当社では外国人だから定着しないということはないと思います。
評価も平等に、また成果へのフィードバックや怒り方も同じです。
ただ、外国人社員は社内では人数が少ないマイノリティーです。
現実的には言語や文化の違いは根深くあり、そこから生まれる誤解や理解の不一致についてはできるだけすぐに解決し、大きなトラブルにならないよう配慮します。
また孤独感をもたせないよう、私が直説コミュニケーションをとるなど、
意図的に関与するようにもしています。
文化の違いなどは尊重しつつも、業務遂行にあたって埋めるべきギャップは埋めなければ進まないことも事実です。
-外国人社員の活用が社内に与えた影響は?
高見澤社長: 私はいつも社員に対し「我が社はさらに海外展開していく」というビジョンを公式に伝え、海外の社員や日本の外国人社員と共に働くことを、当たり前ととらえるカルチャーづくりを目指しています。
実際に外国人社員が活躍することで、異文化への関心も高まりましたし、
言葉できちんと説明し理解を得ることが、違和感なく日常的に行われるようになりました。
もちろんビジネス面でも、母国の考え方や視点を理解できる外国人社員のおかげで、現地ニーズへの的確な対応ができ、大きな成果をだしてくれていると確信しています。
-今後も外国人留学生の採用は拡大されますか?
高見澤社長: 今後ますます拡大するアジア市場での需要獲得は、重要な事業戦略です。
そのため特に営業・販売部門への優秀な外国人材の採用・活用は継続的に実施していくつもりです。
外国人留学生も卒業後、日本の採用方法になじめず、うまく就職先が見つからないので諦めて半数が帰国すると聞きます。
折角日本で学んだのにもったいない話です。
ぜひ優秀な外国人材に一人でも多く日本で活躍してもらえるよう、あらゆる機会を活用して、当社がどのような会社か、社長である私がどんな人物かを知ってもらえるよう頑張ります。
そして良いマッチングの確率を上げ、当社で一緒に働いてもらえればと願っています。
- 今日はどうもありがとうございました。
今回お話をお聞きして強く感じたのは、社長さんのやる気が外国人材の採用の成否を大きく左右するということでした。
これまで高見澤社長の他にも、何人かの経営者の方々から成功事例についてお聞きしましたことがあります。
皆さん一様におっしゃるのは、「外国人社員は経営者の魅力について来る。」 ということです。
外国人社員は、日本人以上に社長の人間性や、社長が語るビジョンに魅力を感じて、その会社で頑張るようです。
そうは言っても外国人社員ならではの悩みも多いでしょう。
そんな時には、社長さん自ら相談にのったりして、時には温かく、そして時には厳しい眼差しで外国人社員を支え続けることが、外国人材活用には必要なようです。
今回お話しいただいた高見澤社長をはじめとする成功している社長さんを参考にして、貴社の事業戦略にも、外国人材の採用とその活用を加えてみてはいかがでしょうか。