訪日外国人旅行客が年々急増し、「インバウンド消費」が日本の経済を大いに活性化。
そこにアイデアしだいで様々なビジネスの種があることを前号で紹介しました。 今回は、日本の産業界に新しい技術や革新的経営をもたらし、「日本経済活性化の鍵」となる外国からの対内直接投資(外国から日本への投資という意味です。)を取り上げます。
対内直接投資を促進するための外国企業の日本への進出促進策や企業誘致における課題などについて考えたいと思います。
~インバウンド拡大のため外国企業誘致促進!!~
2020年に、対内直接投資残高を35兆円(2012年時点17.8兆円の倍増)にするとの大きな目標を政府は掲げています。
対内直接投資は、内外資源の融合によってイノベーションや地域での投資拡大・雇用創出に貢献し、日本の成長力強化の原動力となるからです。
2012年には、特定グローバル企業の研究開発拠点や統括拠を日本へ呼び込むための特別措置法「アジア拠点化推進法」が施行されました。
特定グローバル企業には、所得税特例や資金調達支援、特許料軽減や様々な手続きや審査の迅速化などが優遇されます。
さらに直接投資額が200億円以上で常用雇用者数500人以上というような大きな対日投資をする企業に対しては、副大臣などを企業担当につけて政府と相談しやすい体制づくりも整備中です。
しかし、いずれも大規模な対日投資をする企業を対象とした優遇策だといわざるを得ないでしょう。
本当の意味で、日本の経済活性化を下支えするのは多くの中小企業です。
大企業の拠点づくりに対してだけでなく、小規模な企業でも日本に進出する意欲のある企業や、日本で初めて起業にトライする外国人の若者などへの草の根的な支援の拡大が強く望まれるところです。
私たちアスパルが主宰している外国人起業家を支援するコミュニティ『BPIJ』もまた、このような考えの基に活動しています。
それでは外国人が日本で起業しようとした場合、いったいどのような課題があり、またそれらの課題はどのように解決されているのでしょうか。
まずは会社の設立についてです。
今年3月には、代表者の外国人が日本に住んでいなくても会社を設立できるように規制が緩和されました。 小さな一歩ではありますが、外国企業が日本に子会社を設立しやすい環境に近づいたと言えると思います。
外国人の経営者を対象とするビザにも変更がありました。
今年の4月から、高度外国人材ポイント制を活用し、一定のレベルをクリアした外国人に優遇措置を実施する「高度専門職第1号」ビザを新たに創設しました。
さらに、「高度専門職第1号」として3年間在留した人に、在留期間を無期限とし活動の制限も大幅に緩和される「高度専門職第2号」の在留資格も創設されています。
ただし、経営者として「高度専門職」に該当するのは、一部の外国人経営者に限られます。
高度専門職に該当しない経営者は、これまで通り「経営・管理」ビザを取得することになります。
残念ながらこの「経営・管理」ビザを取得するためのハードルは、最近下がるどころか難しくなる傾向にあると感じています。
日本でビジネスを開始したいという外国人起業家を支援する立場としては、政府の方針に逆行するようなこの行政の動きは理解しにくい部分です。 この点については、強く異を唱えたいと思います。
さらに、外国人起業家にとっては、資金調達の難しさというハードルもあります。 現状では、日本に永住者ビザをもたない外国人が、事業開始のために銀行などから融資を受けることはほぼ無理と言わざるを得ません。
また、補助金・助成金を獲得しようと思っても制度の複雑さや言葉の問題などもあり、低いハードルではありません。
このように日本は、外国人起業家にとってビジネスをスタートアップするための環境が整っているとは言い難いというのが実情ではあります。
ですが、「日本人が知らない儲かる国ニッポン」(ティム・クラーク&カール・ケイ著、日本経済新聞社)の中で、外国人である著者は、「アウトサイダー」としての外国人から見ると、日本はまだまだビジネスチャンスが潜んでいる国だと強調しています。
外国人起業家を支援する制度も少しずつ整備されていくことを期待します。
そして、どんどん外国人起業家に日本でビジネスチャンスを見つけてもらい、日本人起業家もまた負けないようにビジネスにまい進してもらいたいところですね。
そして私たちもまた彼ら起業家たちを応援してビザや資金調達の課題解決のお手伝いをしてまいります。 それでは、今日はこの辺で。