急速に高齢化が進む今の社会ですが、お年寄りが被害に遭う事故やお年寄りを狙った犯罪が後を絶ちません。 成年後見制度は、高齢や病気などのために判断能力が低下した方を保護し、サポートするための制度です。 身近に、「これまではちゃんとご自分で何でもやってきた。でも最近少し一人でおいておくのが心配に・・・」というような方はいらっしゃいませんか?普通だったら買ったりしない高額な商品を購入する契約書にハンを押したり、自分がどの銀行にいくら預けてあるかも忘れてしまうなど、安全に生活するためにはどうしても他の人のサポートが必要な方に対して、裁判所が、誰にサポートを任せるかやそのサポートの内容を決めてくれます。 この制度を利用できるのは、保護を必要とする方のご家族や身近にいる方ですが、まだ十分に判断能力をお持ちの方が自分の将来に備えて利用の準備をすることもできます。
成年後見制度は、大きく分けて二つあります。
法定後見制度
家庭裁判所によって選ばれた「成年後見人」などと呼ばれる人が、本人の代理となって契約を結んだり、本人の行為について同意を与えたりすることによって、本人の利益を守る制度です。 本人の判断能力の状態に応じてサポートできる範囲が決められていて、それぞれ「後見」、「補佐」、「補助」に分かれています。 保護を必要とする方がどの程度の判断能力を有していて、どの範囲の保護が必要とするかは、裁判所の判断で決められます。 裁判所に対してこの成年後見を開始してもらうための申し立てができる方は限定されていて、本人、配偶者、四親等以内の親族(子、兄弟、おじおば、いとこなど)、検察官のほか、本人が住んでいる市区町村長も申し立てをすることができます。 成年後見人や保佐人に選ばれる人は、本人の親族のほか、法律や福祉の専門家の第三者で、サポートする範囲に応じてこれらの人を複数人選任することもできます。
任意後見制度
今現在は十分に判断能力をお持ちの方でも、将来、保護が必要な状態になってしまったらどうしようと不安に思われる方もいらっしゃると思います。このような場合に予め「任意後見契約」という契約によって、保護が必要な状態になった場合に事前に決めておいた内容で成年後見を受けられる制度です。 予め決めておいた内容が、いざというときに確実に実行されるように、任意後見契約は公証役場で公正証書として作成する必要があります。また、任意後見の開始にあたっては、裁判所に申し立てることによって、任意後見人を監督する「任意後見監督人」が選任されことが必要です。 任意後見人として身内の方を指定しておいて、任意後見監督人には法律などの専門家が選ばれるケースが想定されます。
成年後見登記制度
法定後見や任意後見を受けている方の氏名や成年後見人などの権限、任意後見契約の内容などは登記され、登記された情報は登記事項証明書として開示されることになります。ただし、この登記事項証明書の交付を請求できるのは限られた方だけですので、誰でも自由にこの情報を取り出せるわけではありません。 例えば、成年後見人が本人のために本人に代わって契約をするような場合、契約の相手方に登記事項証明書を提示することによって、相手方にとっても安心して契約をすることができるわけです。
また、成年後見などを受けていない方、つまりご自分が十分に判断能力をお持ちの方の場合は、成年後見を受けていないことの証明書(登記されていないことの証明書)の提示を求められる場合があります。登記されていないことの証明書は、予め特別な手続きをしていなくても、法務局に請求すれば発行してくれます。