気持ちが一つになっている時は、お互いに何よりも大切だった二人。その思いが強ければ強いほど、大きな“ひずみ”ができてしまった時の、悲しみや憎しみは深いものです。婚約破棄、不倫、離婚・・・・・そんな感情に加え、財産問題や子供の親権・養育問題などが絡むことも多いですから、それはひと筋縄ではいきません。どんなに冷静な人間でも、自分でも想像もしなかった言動に出てしまうこともあるようです。そんなことになる前に、以下にご紹介した対応などを、ぜひ参考にしてください。
婚約・結婚
結婚前に、まずトラブルになりがちなのが、婚約です。その一つの原因は婚約の意義や意味が、身近な言葉の割にあまり理解されていないことでしょう。また内縁という言葉も耳にするほど明確には知られていないようです。婚約がスムーズに進めば、何も必要のないことですが、婚約や内縁の関係を解消する場合、さらに損害賠償などを決める場合に重要になってきます。本来は誰も、慰謝料など請求したくはないはずでが、それでも必要になってしまった場合は、以下の説明を参考に、問題が複雑になる前にご相談ください。
婚約とは
婚約は、男女間に将来「結婚しよう!」という合意があれば成立します。しかし、婚約したからといって婚姻を強制的に実現させることはできません。一方が婚姻の意思がなくなった時、自由に解消できなければ、婚姻の意義や憲法にも反してしまいます。一般的に結納や婚約指輪を交わす儀式などがありますが、婚約の成立とは関係ありません。 ただ万が一、婚約破棄などで、裁判になった場合、言葉だけでは婚約の証明が難しく、そうした儀式の有無が婚約の証明になりやすいことも事実です。
内縁とは
内縁は、男女間で婚姻の意思があって共同生活をし、社会的には夫婦と認められても、婚姻届を出していないために法律上では夫婦と認められない関係をいいます。同じ状況でも、婚姻の意思がない場合は同棲となり、内縁とは区別されます。 内縁も、同棲も、解消する場合は、法的な保護は受けられませんが、内縁の場合には、婚姻に準ずる関係として一定の保護は受けることはできます。
離婚
どんなご夫婦でも、できれば避けたかった離婚。精神面ではもちろんですが、財産面や子供の親権問題など複雑な利害関係を整理しなければならないから大変です。日本では、離婚の方法は主に4種類あります。「協議離婚」、「調停離婚」、「審判離婚」、「裁判離婚(判決離婚)」です。以下に離婚の際に重要なポイントと離婚の方法についてまとめました。ぜひ、参考にしてください。ちなみに日本では、「協議離婚」が全体の約9割。できればもめずに済ませたいものです。
離婚の原因
夫婦は、お互いの合意によっていつでも自由に離婚できます。しかし、一方が合意できないために、調停や裁判によって離婚しようとする場合には正当な理由が必要です。離婚の原因は、その夫婦ごとに違うはずですが、民法が定めている離婚事由は5つ。原則として、どれか一つでも該当すれば離婚は認められますが、裁判所の裁量によって棄却されることも少なくありません。
(1)配偶者に不貞な行為があった時
「不貞な行為」とは、夫婦の一方が相手以外の異性と性的関係(性交渉)を持つこと。いわば浮気や不倫です。不貞は1回限りでも成立しますが、一般的には継続的なケースが多いようです。
(2)配偶者から悪意で遺棄された時
「遺棄」とは、結婚の意味する夫婦の同居や協力、扶助の義務などを怠ることをさします。このどれか一つでもあれば、離婚は成立しますが、一般的にはやはり重複するのが実情です。
(3)配偶者の生死が3年以上、不明な時
生死が分からない状態が3年以上続いた場合、離婚の理由として認められます。ただし、所在などが不明でも、携帯電話などの着信がある場合は生存が確認され、該当しません。
(4)配偶者が強度の精神病になり、回復の見込がない時
結婚の意味する夫婦の同居や協力、扶助の義務などを負えないほど重症な精神病であり、不治の病である状態をいいます。しかし、不治の精神病かどうかの判断はとても難しく、最終的には裁判所にゆだねられ、専門医による判断資料も含めて判断される場合が多いようです。また、たとえ不治の精神病と認められても、離婚後の病人の療養や生活などがある程度目途がついていなければ、離婚は認められないというケースもあります。
その他婚姻を継続し難い重大な事由がある時
継続し難い重大な事由とは、(1)~(4)に比べればとても抽象的な理由になり、それだけにその判断も生活全般にわたって、総合的に判断されることになります。日々の両者の行為や態度、結婚を続ける意志の有無、子の有無や状態、さらに両者の年齢、健康状態、性格、職業、資産収入などまで審理の対象になり、時には誹謗中傷合戦になる場合もありますし、その結果お互いのプライバシーをさらけ出すようなことにもなりかねません。
離婚の方法
離婚の方法には、以下の4つがあります。ただし、協議離婚で合意できなかった場合でも、すぐに審判離婚や裁判離婚に持ち込むことはできません。法律で離婚は、調停前置主義といって、まず家庭裁判所に調停を申し立て、それでも不成立になった場合に、初めて訴訟を起こすことができます。
1.協議離婚
夫婦が話し合って、離婚に同意し、お互いに離婚届に署名捺印して、証人2名も署名捺印して、市町村の窓口に提出して離婚が成立します。子供がいる場合には、離婚届に親権者の氏名を書かなければならないので、親権者が決まっていない場合には離婚できないことになります。 財産分与、養育費、慰謝料などについても、夫婦で話し合って決めます。
2.調停離婚
夫婦の話し合いで離婚の同意に至らない場合、家庭裁判所に離婚の調停を申し立てることができます。離婚についてはもちろん、財産分与、養育費、慰謝料等もまとめて話し合えます。家裁では、調停委員が夫婦の間に入って調停が行われます。裁判とは違うので、調停委員は法律的な判断を下すようなことはしませんが、話し合いの結果、夫婦がお互いに離婚に同意し、その他の条件などでも合意すれば、調停調書を作成して調停離婚が成立します。
3.審判離婚
一般に調停の最終段階で、同意に至らない場合に、裁判所に審判を出してもらい、離婚する方法です。ただ裁判所の審判は、2週間以内に異議申し立てをすると、効力が失われてしまうため、あまり利用されることはありません。
4.裁判離婚
夫婦での話し合いや家裁の調停でも、離婚が成立しない場合、夫婦の一方から地方裁判所に離婚の訴訟を起こすことができます。裁判による判決は強制ですが、さらに高等裁判所、最高裁判所まで争うことができます。もちろん、当事者が自分で裁判に対応することはできますが、裁判で自分の主張を理解してもらい、自分に有利な判決を受けようとすれば、どうしても法律的な知識や技術が必要になるため、弁護士などの代理人を立てて争うことが多くなります。
離婚の際に決めなければならない事項
●財産分与について
財産の分与には、共有財産、離婚後の扶養、慰謝料の3つの検討事項があります。ただし、現状では慰謝料については、財産分与の一つとして慰謝料を捉える考え方と単独で捉える考え方があり、裁判ではケースバイケースで折衷案となることが多いようです。
共有財産
結婚中に夫婦で築いた共有財産をお互いの同意の下に清算することです。これらの財産は、たとえ名義が一方の場合でも、相手の協力があっての財産と考えられ、原則としてその名義にかかわらず財産分与の対象となります。財産分与では、離婚責任にかかわらず、平等に財産分与を請求できます。
離婚後の扶養
離婚後は、自己責任のもとに各自で生活を維持していくことが原則です。しかし、結婚中は専業主婦で個人の財産を築くゆとりがなかった、結婚退職によって職能が低下し、すぐに回復するには時間がかかる、などの理由がある場合には、経済力のある方(多くの場合夫)が他方(多くの場合妻)にある一定期間何らかの形で扶養する必要があると考えられています。
●慰謝料について
離婚の慰謝料は、相手方の行為によって生じた損害賠償の一部で精神的・肉体的苦痛に対するものを言います。離婚の原因に責任のある方、または責任の重い方が慰謝料を相手に支払うことになります。不貞行為などに対する慰謝料は当然ですが、そうした不法行為ではなく、さまざまな行為の積み重ねによって離婚になった場合でも、その離婚自体の精神的損害を賠償するために慰謝料が発生すると考えるのが一般的になっています。
●親権について
離婚後は、原則的に未成年の子供がいる場合には父母どちらか一方に親権を指定しなければならないことになっています。離婚届にも親権者とその子供の名前を記載しなければなりません。ただし、離婚の方法によって、その親権の決め方は少し異なります。
協議離婚の場合
離婚についての話し合いに中で、親権についても決めます。離婚と親権者の指定は同時に行われることが原則ですので、離婚することが合意できていても、親権者が決まらないと離婚届は受理されません。
裁判離婚の場合
裁判によって離婚は成立したが、親権を父母で争うことになった場合は、裁判所が父母の一方を親権者に指定します。未成年の子供が15歳以上である場合は、裁判所はその子の意向も尊重しなければなりません。
調停離婚・審判離婚の場合
基本的に調停や審判によって、親権者を決めることになっていますが、その判断によって「後日にこの意向を尊重した上で、当事者間で協議して決定する」となる場合もあります。この場合は、特例として離婚後で婚姻関係になくても、共同親権となることが認められています。
従来、上記のような流れで、親権者が決まっていましたが、少子化社会を迎えた近年では、いくつか問題も出てきています。
・親権者の他に、監護者を決める必要がないかどうか。
・養育費の金額はいくらが適当か。
・監護をしていない親などに面接することを認めるかどうか。
・親権者や監護者になる予定の親が、実際に監護をしていない場合、引渡し請求を認めるかどうか。
協議で決められればいいのですが、決められない場合は家庭裁判所がこれを定め、必要に応じて、監護者を変更することができます。通常は親権者と監護者は一致することになっていますが、子供の利益のために必要であれば、分けて考えることができます。
[親権者と監護者の権限]
親権には、法律上 [1]身上監護権 [2]財産管理権および代表権 [3]法定代理権および各種同意権の3つの権限があります。法的に認められている監護者の権限は、15歳未満の代諾縁組の同意権だけですが、通常は上記の[1]身上監護権は監護者にあると考えることが多いようです。また保護者という場合も、監護者が指定されている場合は、監護者を保護者と考えるケースが少なくありません。
[監護費用(養育費)の分担]
父母は、親権の有無にかかわらず、未成熟子に対して生活保持義務を負っています。そのため父母には、お互いに監護費用の分担を請求する権利があります。そして同時に、未成熟子には、自ら権利者として(15歳未満であるときは法定代理人によって)、扶養請求をする権利があります。したがって、もし親同士が「今後は養育費を請求しない」と合意しても、子供が15歳以上になって自ら扶養請求をすることができると考えられています。 また監護費用の増減についても、一度養育費や監護費を協議や調停で決めた後に、双方の収入や物価の変動があった時は、再度協議などによって変更することもできます。
[面接交渉について]
たとえ離婚していても、親が子供に会うことはこの監護の一つですから、家庭裁判所は、子と同居していない親との面会について父母の間で協議が一致しない場合は相当な処分を行うことができます。その際に最も重視することは、「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と決められています。これは通常、面接交渉権といわれていますが、親が子に面会する権利ではなく、「子のために適正な処置を求める権利」であると理解するようになりました。
外国人との離婚
離婚する夫婦のどちらか、または双方もしくは未成年者の一人以上が外国人の場合の離婚の場合を、渉外離婚事件といい、特別な対応が必要になります。さらに日本人同士の離婚でも、外国滞在中に離婚届や出生届を出した場合にもこれに準ずる対応が必要になる場合もあります。 その場合のポイントは、以下の4つです。
(1)国際的に見て、その離婚調停の申し立てが、日本に裁判管轄権があるのか。また、該当する国の裁判所のみが扱うべきケースに該当しないか、という検証がまず必要です。
(2)国際裁判管轄権が日本にある場合は、日本の裁判所が日本の手続きによって裁判することになりますが、その際、調停するための実態的法的基準はどこの国の法律に従うかという問題もあります。
(3)調停が成立しても、それが外国でも承認されなければ意味がありません。日本の調停調書が外国でも効力が認められるか、国際的効力の問題があります。
(4)渉外離婚事件の場合、通常の事件とは違った配慮が必要になるので、事前にどんな配慮が必要か検討しなければなりません。